【尋常でないこだわり】
本作には、作者さんの執念と職人性が随所に表れていると感じました。
・長セリフ中の表情変化
長い台詞の最中にも立ち絵が細かく切り替わります。商業作では当たり前に見えますが、手作業では膨大な工数が必要です。AIを補助的に使えたとしても最終調整は人力ですので、ここまでの密度は並大抵ではないと思います。
・主人公以外フルボイス
モブに至るまで声が入っています。担任やチンピラのような一場面キャラにも妥協がありません。演技水準も高く、個人的には、特にマコ役の方は突出していると感じました。またシナリオ後半で出番が倍増する某キャラクターの演技も、非常にハイレベルです。
・自作の幅と完成度
シナリオ・音楽・CGの大半に加え、オープニングアニメまで自作とのことで、5年に及ぶ制作期間の重みが伝わってきます。後半は一部スタッフが加わっているとのことですが、作品世界の基礎体力は作者さんご自身の手で築かれていると受け止めました。
【テンポの良さ】
導入の運びがたいへん巧みです。
冒頭の対チンピラ戦で、主人公・親友・幼なじみの関係性が一気に把握でき、そのまま世界の謎の提示、氷翠やクレアといった主要人物の紹介まで一気呵成に進みます。
同人作にありがちな“情報のじらし”に偏らず、開始15分で基本設定と主要キャラクターが揃う構成は英断だと思います。
実際、氷翠についてのある重要な情報が、思いのほかシナリオ序盤で開示されるのですが、そのことがプレイヤーの没入感向上に大きく寄与しています。
その一方で、本作は「謎の提示」→「解決」→「新たな謎の提示」→「解決」…というサイクルを短いスパンで戦略的に取り入れていると思われ、1つの謎が解決したからといってリーダビリティを損なうことがありません。プログラミング・宗教・哲学など、広範にわたる分野を統合しつつ、終盤へ向けて盛り上がるシナリオを統合した手腕は見事だと思います。
【キャラクターの掘り下げ】
各キャラクターの性格と目的が明確で、序盤から心の機微が丁寧に描かれます。
クライマックス前には、全員が自らの動機に基づいて優先順位を定めることになりますが、「あちらを立てればこちらが立たず」という局面で互いを思いやる主人公陣営の姿には、胸が熱くなりました。随所に挿入される another view が心情を可視化し、どのキャラクターにも感情移入しやすくなっている点がここに寄与しているのでしょう。
【総括】
以上のように、本作は多くの面で高水準を保っていると感じます。
加えて、体験版だけで一つの物語としてきちんと完結している一方、共通ルートには未回収の「種」が丁寧に残され、個別ルートへの期待を自然と高めてくれます。率直に言って、「傑作」と評価したい作品です。
テーマや世界観は少し複雑ですが、「バグ」や「デバッグ」といったゲーマーになじみのある言葉を使ってうまく頭に入り込んでくる不思議なお話です。世界観がゲームそのものなので、グリッチという形で登場人物がいろいろな裏技、バグ技めいたことを行えるので結構何でもありですw
ヒロインたちの意外な一面や、主人公への信頼を見せてくれる描写など王道美少女ゲームとしての立ち振る舞いをしていますが、その実結構意外な展開やアツいストーリ等先述の「何でもあり」だからこそいい意味で予想した展開を裏切られることもしばしばあります。個人的に高評価ポイントは漫才みたいな小気味いいやり取りが多いのでにやにやしながら楽しめます。
とりあえずこのクオリティが無料でできるのはアツいので迷わずやれと断言できます。
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