精神仕掛けの浪漫劇

葉月さやか

舞台モチーフの戦闘×近代文学風味テキスト×大正浪漫エッセンスのRPG

blossacream

貴方に総てを擲ちたい(1.55)

若干のネタバレを含みます。



近代口語文学的に綴られる、男女の情交の浪漫物語。余裕派文学の雰囲気をまといながらも、前後の文脈で存じない単語の意味も類推できる文章になっていて、ゲーム部分からこの作品に入ったプレイヤーを置いていかないように工夫もされています。一文が短く区切られているのも、ゲームとしての読みやすさに配慮してのものでしょう。
「フグ鍋のかわりにハラハタ鍋を食べるのか」という皮肉や、「意思とは慾です」という単純にして核心をついた比喩表現などに表現力の高さがうかがえます。
恋愛感情の表現の仕方にそのキャラクターの人間性が表れており、「酔興な英雄慾」でもって、想い人を傷つけると分かっている方法で彼女を守ろうとするジェラード・チャートル。「貴方に鹵獲されている」「貴方の論理は理解ができないが、それが心地好い」と、「愛」という感情を皮肉的に形容する甲野忠信。一方の宗近勇一郎は愚直かつ磊落で、分かりやすく嫉妬もするが実直で熱い人間。「宗近勇一郎という人間の意思になってほしい」「貴方に総てを擲ちたい」と真っすぐに感情をぶつけるさまは、前者二人とは対極であり、故に反響の大きいキャラクターになっているのだと思います。

育成については、熟練度やパラメータがすくすくと成長していく過程を楽しむことができます。セルフドリンクを設定してクイック戦闘を実施すれば、テンポよく快適な育成プレイが可能となり、忙しい人でも隙間時間でのプレイを可能にしています。
戦闘システムにおいては、行動順番や使用するスキルの順番を意識して、必殺技やコンボを発生させる戦略性の高さが魅力です。属性ごとに異なる待機時間を利用して、キャラクターの行動順を制御する必要があります。しかし、通常の戦闘ではそれらを意識する必要はほぼなく、逆にボス戦闘ではよく考えないと敵の必殺技で手痛いダメージを負うバランスになっています。メリハリのあるバランスです。
収集要素であるマジールとリプリス、天啓のカフェもあります。「情熱の恋文」の設置場所には何とも言えない無念や、ラスボスを倒してやろうという意思を強く感じました。リプリスのランダム性は賛否両論あるかもしれませんが、一定回数の重複で好きなリプリスと交換ができるという救済があります。

プレイ時間は10時間程度ですが、戦闘や育成のみを楽しむ方向けの「イベントスキップ・早送り」を使えばもっと短くなるとは思います。快適なテンポの戦闘で回数を重ねられることや、テキストの比喩表現の流麗さが際立つこともあって、プレイ終了時の満足度は何十時間分にも及びました。一戦一戦に時間がかかるため結果としてプレイ時間が間延びするというわけではなく、中身の詰まった10時間になっています。
度々登場していた、一見意味のない選択肢の存在意義が、最後の最後の曇天返しを生み、「“精神仕掛けの”浪漫劇」というタイトルの理由と結びついたのは痛快でした。プレイヤーもしっかり「精神仕掛けの浪漫劇」という作品の役者になっていたのだと、いい意味でしてやられたと思いました。

プレイがしやすいような工夫が随所に感じられる好感触の作品でした。ありがとうございました。

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No.63465 - 2022-10-14 12:45:43
うね

最大の魅力は快適性。ただし界隈では評価されずに埋没

1.15~1.50でプレイしました。
シナリオ、グラフィック、システム、雰囲気づくり、テキスト、戦闘システム、難易度、どれも80点というような印象の作品です。
「よくできてるんだけど、突出して目立つわけでもない」という立ち位置です。
決してつまらなくはないんだけど、じゃあ何を語るかといわれたら……。という器用貧乏的な仕上がりになっています。

こう書くと悪口に聞こえそうなので弁解すると、プレイの快適さは群を抜いています。
最新のアップデートで、格下のザコを一瞬で倒す「クイック戦闘」が実装され、サクサク育成が可能になりました。
エンカウント率、移動速度、戦闘速度、戦闘常時早送り、イベント早送り、イベントスキップ、解像度、各種音量、ショートカットキー呼び出し先をすべてプレイヤーが設定可能で、回復アイテムも自動で補充、拠点に戻れば全回復、バフアイテムを戦闘終了後に自動で使用する「セルフドリンク」も設定可能。フォントをツクールデフォルトに変えることも可能と、ここまでオプションや快適さを追求した作品は、なかなかお目にかかれません。
ただ、オプション項目は、あまりに酷いと減点項目にこそなりますが、加点項目にはなりにくいのが実情です。評価されにくい部分に力を注いだ結果、埋もれた良作になってしまったのかなと思います。

フリゲ特有の「ぼくのかんがえたさいきょうのシナリオ」「尖った戦闘システム」「グラフィック全振りの雰囲気ゲー」というような「一点もの要素」がないために目立ちはしませんが、作品の中身自体も決して悪くなく、ほどよく壁を感じながら楽しむことのできる良作です。
夏目漱石の作品を一通り読了している人間としては、リプリスの名称や台詞の節々、NPCとの会話の中に漱石ネタを感じてにやりとしました。

あまり評価してもらえない「オプション設定の充実」「快適さの追求」に最も力を入れた結果、熱狂的なファンをつけることができずに、プレイを後回しにされて埋没してしまった良作という印象でした。

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No.63241 - 2022-09-17 18:15:44
鈴木誠一

全体的には丁寧によくまとまった良作

1.15でクリア。マジールとリプリスは全種類コンプリート済み。

⭐︎気になった点

・耐久重視のバランス
デバフや耐久、補助にリソースを割かないと、中盤以降は特に戦線が崩壊する。水と地の最終魔法はほぼ必須レベル。「やられる前にやる」という脳筋戦法はまず通じないと思った方がいい。故に、圧倒的火力で制圧する戦法を好むユーザーには不向き。

・プロットを読み上げるだけのようなシナリオ
シナリオが薄味。キャラクターがプロットをそのまま読み上げているような印象。サブイベントのオチも「え?それで終わり?」と拍子抜け。

・アイテム温存思考のプレイヤーには道中が辛い
雑魚敵の火力も低くはなく、先手必勝で全体攻撃を使えば当然SPは減る。館に帰還することでアイテムが全補充されるので、作者の想定は「道中もガンガンアイテムを使え」なのだろう。故にアイテム温存思考のプレイヤーには道中が辛いかもしれない。

・イベント中のイラストが全部影絵
カットインのイラストは見れるレベルのクオリティなのだから(少なくともサムネの椿は可愛いと思う)、大事な場面には一枚絵でも挟めばよかったのにと思う。前世の回想シーンはともかく、最後の最後まで影絵だったのでガッカリ。


⭐︎よかった点

・ユーザビリティが高い
館に戻れば全回復してアイテムも補充。Wキー一発で館に戻れる。
戦闘速度や移動速度の設定可能。
エンターを押し続けなくても常時早送りしてくれる。
エンカ率も変更可能。
ショートカットの呼び出し先を指定できる。
現在の目的やサブイベントの進行状況を確認可能。
敵のドロップ品と出現場所を確認可能。収集時に重宝。
イベントスキップと早送りが可能。一度見たイベントは早回し、見てないシーンになったら早回し解除ということができて便利。早送り時に文章ウインドウを自動で送ってくれないゲームもあったが、本作はウインドウ開閉も自動で送ってくれるので引っかからない。

・シンプルなルールだが、駆け引き要素が高い戦闘
序破急の順にスキルを使うとコンボが発生する。
スキルを使うと星が光っていき、最後の星を
光らせたキャラが必殺スキルを発動する。
本作独自のルールは主にこの二つ。
文字にすればシンプルだが、実際に戦闘をしてみると駆け引きが必要で面白い。
火力だけを求めると「急」ばかりを連打することになり、コンボが繋がらない。
低コストスキルや補助スキル挟んでコンボするか、効果の高いスキルを連打してコンボは捨てるかの選択を迫られる。
必殺スキルをとるために、小回りの効くスキルを挟んだり、ガードを選択したりという戦略も必要で、ワンパターンにならないところが面白かった。

・ボスキャラの特徴が豊か
属性耐性と状態異常耐性をつけて、ヒーラーは全体回復連打でアタッカーは最高火力スキルを連打ーーというパターンの繰り返しではないところが特徴的。ターゲットが固定されたり、バフのプレゼント→ただしバフの数に応じて必殺スキルの威力が上がるけどな!という報復だったり。一方で1vs1の正統派タイマン戦闘もあったりで、その度に戦略を構築していく過程が面白い。補助スキルやマジールの組み合わせによって、反則的な突破方法を実現できるところも個人的はありだと思う。高難易度というよりも「脳筋お断り、補助スキルを活用すればいくらでも楽できるよ。ラスボスすらほぼノーダメで完封できるレベルまで反則できるよ」という方が正しい。同じスキル、同じ装備、同じ戦略で楽に進めたい人には合わないが、個人的には程よい歯応えだった。

・隠し要素の発見方法が意地悪でない
攻略本がなかったら分かるわけないだろ、というような要素はない。天啓のカフェの場所も、違和感のあるオブジェクトは見つけやすいのでノーヒントでコンプリートできた。

・人を選ぶような寒いネタがない
パロディネタや下ネタ、BLネタやGLネタ、反応に困るギャグ描写がないため、嫌悪感なくテキストを読めた。恋愛描写も、ラッキースケベだとかツンデレ台詞だとかはなく、「お慕いしておりました」というような柔らかく慎ましい言葉で表現されるので、恋愛描写アレルギーの人でなければ問題ないと思う。ヒロインレース的な要素もない(誰がどう見ても、カップリングするのはこのキャラとこのキャラというのが明らか)ので、ハーレム嫌悪症でも問題なし。言葉遣いも、大正時代の当時のエッセンスが入っていて読み応えがある。文学チックな言い回しも面白い。(funではなくinterestingの意味で)

・BGMがいい
違和感のある使い方のサウンドはなかった。忠信戦とラスボス戦のBGMは特に痺れる。


シナリオ重視かと思いきや、シナリオは薄味の代わりに戦闘は歯応えのある作品だった。
シナリオやキャラを見たい人は「喜劇の切符」という救済アイテムがバージョンアップで追加されたので、それを使いながら進めていくといいだろう。
どうしても勝てないなら、水の最上位魔法で敵のブーストを強制的に阻止すればなんとでもなる。

全体的な出来栄えは充分良作の範囲だと思った。
プレイ時間は約14時間だった。

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No.62706 - 2022-06-30 22:10:48
べにほっぺ

駆け引きが面白い戦闘と、胸がときめく恋愛模様

16時間かけてクリアできました!

通常の戦闘はさくさくで、ボス戦はじっくり考えるバランスがとってもよかったです。
強力なスキルを連発するか、コンボを狙って使うスキルを考えるかの選択が楽しく、敵味方共通のフィナーレゲージがあるので、時にはガードや待機の少ない行動を挟むといった立ち回りも必要で、奥深い戦闘が楽しめました!

マジールやリプリス、軽食レシピの収集要素もあるので、いろいろ探索してしまいました。

勇一郎カッコいいよ勇一郎!
椿ちゃんや忠信への少し不器用だけど、愚直で真っすぐな思いにトキメキました!
過去を知って落ち込む椿ちゃんへの励ましや、ラストの椿ちゃんへの告白は思わず「キャー!キャー!」と言ってしまいました(*´Д`)

言葉も綺麗で、「太陽の筆先」「酔狂な英雄欲」というような比喩表現も端麗だなぁと思いました。

シナリオが駆け足だったので、もう少しこの世界観に浸っていたかった、もっと掘り下げてほしかったなぁと思います。

でもとっても楽しかったです!

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No.62612 - 2022-06-14 16:34:17
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